作業療法士が考える就労支援
はじめに
今回は、就労支援について、作業療法士の立場から考えてみたいと思います。皆さんが想像する就労支援と異なる箇所もあると思いますが、普段の臨床で行っている治療が、見方を変えれば「就労支援」になっている可能性もあります。対象者の人生を紐解きながら、作業に触れ寄り添える、それが作業療法士だと感じています。
就労支援ってなに?
我々が就労支援という言葉を耳にすると、「体に不自由がある人に対し、社会に出て仕事をするための支援」と捉える人が多いと思います。厚生労働省、就労支援移行事業所の事業概要にも「就労を希望する65歳未満の障害者で、通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれる方に対して、①生産活動、職場体験等の活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力向上のために必要な訓練、②求職活動に対する支援、③その適正に応じた職場の開拓、④就職後における職場への定着のために必要な相談等の支援を行う」と定義があり、就労=生産性があり賃金などが発生することを指す と私は感じていました。
作業療法士の関わり方
病院で勤務していた際の関わり方として、まずは対象者がどのような仕事をしているか聴取し、どんな身体・認知機能が必要かを考え、評価します。仕事に復帰できる機能を保っている場合もあれば、元のポジションに復職することが出来ない場合もあります。その場合は、定期的に本人・家族・勤務先の職員などと話し合いを重ね、現状可能な仕事に復帰できるよう説明や指導を繰り返します。また、リハビリの際に仕事内容に沿った課題提供を行い練習、その風景を写真や動画撮影し、職員などにお見せすることも多くありました。訪問現場に勤務してからは、病院勤務時のような直接的な関りがほとんどなく、目標にしている周囲の作業(例:家事や仏壇の掃除など)、自宅内での役割を達成することが多く、一般的な「就労」のイメージからすれば直接的な関りはないように捉えてしまいます。
とある勉強会に参加して
前述した「就労」のイメージですが、数年前に参加した勉強会で考え方に変化を持ちました。社会復帰や生産性があるものを「就労」と考えてしまいがちですが、対象者にとって重要な作業や活動を紐解き人生観に触れることで、「私は夫に料理を振る舞うのが大好きなんです」「ご先祖様の仏壇を綺麗にするのが私の役目です」との発言も、一人にしかない役割であり、その人の仕事=作業だと再認識できました。たとえお子さんであっても「僕は自分で服を着る」といった行動が、自分や誰かのためになるなら…柔軟な見かたで「就労」を捉える重要性を学びました。今の関わり方で大丈夫かな?と不安だった私に、「賃金の発生や社会復帰だけが就労ではない」と自信をくれた、実りある勉強会でした。
おわりに
私たち作業療法士が治療を行う中で、身体や認知面の改善は必ず必要なことですし、重要なことだと感じます。社会復帰だけを就労支援と捉えるのではなく、対象者の周りに隠れている核を見つけ、作業療法の中で強みに変えていきたいなと日々考えています。にじいろ訪問看護ステーションでは、多職種連携をしながら、一人一人に合った支援を検討・実践していきます。